事例紹介

サプライチェーンにも及ぶRE100のインパクト! 太陽ホールディングスの挑戦とは?

世界中の電子機器に使われている重要部材を製造する太陽ホールディングス。同社の子会社がこの度、米アップルとの間で製造電力を100%再生可能エネルギーでまかなうと約束した。そこに至った背景を探る。

水上太陽光発電を生かし
アップル社製品を支える

米電子機器大手のアップルは今、部品サプライヤーに対し、同社製品の部材製造に使う電気を100%再生可能エネルギーで賄うよう取り組みを進めている。

そんな中、太陽ホールディングス(東京)の子会社、太陽インキ製造(埼玉)は2018年5月、アップル向けの生産について製造パートナーとして再生可能エネルギー100%で行うと発表した。

あらゆる電子機器に使われる「プリント基板」という部品がある。アップルの主力製品iPhoneなどにとっても重要な材料だ。太陽インキ製造は、そのプリント基板を保護する「ソルダーレジスト」を製造している。つまり、アップル製品の基幹部分を支えているという訳だ。 

再エネ電源は、2014年から太陽ホールディングスの子会社、太陽グリーンエナジーが運営しているフロート式水上太陽光発電所が担う。埼玉・嵐山町の工場で生産するアップル向け製品をこの発電所でまかなう。国内のアップル社製品向けは、太陽インキ製造の埼玉工場で造っているが、実は海外向けに台湾や中国などにも工場がある。今回は日本生産分だけが対象となる。

ちなみに、この取り組みで第1号のサプライヤーとして注目されたのが、半導体パッケージ関連製品を供給するイビデンだった。太陽インキ製造の事例はそれに続く第2号で、やはり注目度が高い。

大震災の計画停電が契機
自治体の協力を得て実現

太陽ホールディングスは、そもそもなぜ太陽光発電事業を始めたのか。実は2011年の東日本大震災で、埼玉工場が計画停電の範囲に入ってしまい、一時的ながら生産停止に陥った経験があるからだ。

同社はアップル製品に限らず、世界中に電子機器の重要部材を供給している。そのため、ひとたび長期停電になり工場が止まれば、いくつもの他メーカーのタブレット製造工場までもが稼働停止しかねない。そんな緊迫した状況になる可能性が高いのだ。


埼玉県比企郡にある太陽インキ製造本社の隣接地に設置された、発電容量約318kWの嵐山大沼水上太陽光発電所。

計画停電のインパクトがあり、2014年に太陽光発電に着手した。たまたま工場がある嵐山町の調整池が空いていたため、水上太陽光発電を初めて手掛けた。「ここは町が所有しており、自治体も協力的だったため無事に設置できました」と、太陽グリーンエナジーの荒神文彦社長は話す。

この取り組みが、結果的に今回の発表につながった。

20年にオフセットを達成
途上国に生かせる製品も

荒神社長は、「グループの工場および事業所で消費する電力使用量相当の再エネ発電を目指しています」と再エネ発電に対する意気込みを語る。既に2018年末時点の電力使用量に対して110%相当の発電量を達成している。2019年10月に工場を譲り受けたことから、現在はその電力消費量分に相当できるよう、さらに再エネ発電を進める考えだ。

今後は効率化を図り、自家消費、分散型電源の時代に備えて、新しい太陽光発電の在り方を模索する。

例えば、現在は農業の分野で、畑の上に太陽光パネルを付けるソーラーシェアリングがある。そんな中、ビニールハウスに付けられるビニール型太陽光パネルや、日本ワイン製造地でブドウの棚を組む際の足場に付ける太陽光パネルなどに注目しているという。こうしたものが実現すれば、発展途上国の農地でも使える。

太陽ホールディングスは新たなビジネスモデルの創出を足掛かりに、さらに環境問題への取り組みを強化している。

PROFILE

太陽グリーンエナジー株式会社
代表取締役 社長

荒神文彦氏


取材・文/大根田康介

RE JOURNAL vol.2(2019-20年冬号)より転載

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