事例紹介

洋上風力発電の「促進区域」が見えてきた。成否を分けるのは地元合意形成

日本はこの先、国を挙げて洋上ウィンドファーム(大規模風力発電施設)の建設を目指す。漁業関係者はじめ先行利用者との利害調整が鍵を握る。有望な区域はどんなところが選ばれているのだろうか。

動き出した洋上新法

2020年度の洋上風力「促進区域」の指定に向けて、経済産業省と国土交通省は12月13日、有望な区域に関する情報提供の受付を開始した。2019年4月より施行された洋上新法「再エネ海域利用法」に基づくもので、洋上風力の導入を積極的に進めるエリア「促進区域」を選定するプロセスの一環だ。今年、既に有望な区域として4区域が選ばれており、2020年度も一定程度の数が選ばれる見通しだ。

再エネ海域利用法は、洋上風力発電の導入拡大を目指して制定された。これまでは一般海域で洋上風力発電を行おうと思っても、海に風車を設置するための統一的なルールがなく、スムーズに事業化を図ることができなかった。特に、一般海域を長期にわたって占用することに関する法律がなく、都道府県条例に委ねられる部分が大きかった。占用期間については、どの都道府県条例も3年~10年程度と短いため、事業計画に中長期的な見通しを立てることが難しく、資金調達の足枷ともなっていた。

再エネ海域利用法は、この状況を一変させた。同法によって、最大30年間にわたり、風力発電のために一般海域を占用することができるようになったのだ。しかし、同時に、洋上風力発電を推進すべき海域を、国が「促進区域」として指定することになった。その区域内に限って、30年ルールほか促進策が適用される。既にプロジェクトを進めていた事業者にとっては、計画地が促進区域に選ばれるかどうかは事業継続に関わる大問題なのだ。風力発電プロジェクトの誘致を進めてきた地元自治体にとっても同様だ。
 

有望な区域は?

2019年、促進区域指定の前段階となる「有望な区域」として、次の4区域が選ばれた。

●秋田県能代市、三種町および男鹿市沖
●秋田県由利本荘市沖(北側・南側)
●千葉県銚子市沖
●長崎県五島市沖

これらの区域は、再エネ海域利用法が制定される前からプロジェクトが進んでいる場所であり、既に地元合意などの環境整備にも進捗がみられると評価された。

上記4区域以外にも、今年は7区域が候補に挙がっていた。その場所と、経産・国交両省から示されたそれぞれの区域における今後の進め方は以下のとおり。

●秋田県八峰町および能代市沖「有望な区域であるため、今後の地元合意などの環境整備の進捗状況に応じ、可及的速やかに、協議会の組織や国による風況・地質調査の準備を開始する」
●秋田県潟上市沖「有望な区域であるため、今後の地元合意などの環境整備の進捗状況に応じ可及的速やかに、協議会の組織や国による風況・地質調査の準備を開始する」
●青森県沖日本海(北側)「利害関係者の特定および調整が必要である」
●青森県沖日本海(南側)「利害関係者の特定および調整が必要である」
●青森県陸奥湾「利害関係者の特定および調整が必要である。また、防衛面への配慮からの制約を受ける区域である」
●新潟県村上市・胎内市沖「系統の確保、利害関係者の特定および調整が必要である」
●長崎県西海市江島沖「世界遺産との関係において問題が生じないよう整理することが必要である」

 

世界では洋上が主流、
1兆ドルビジネスへ

日本では普及の途に就いたばかりの洋上風力発電だが、ヨーロッパでは年間1000~3000MW規模で増えつづけ、既に競争期を迎えている。

国際エネルギー機関(IEA)は10月25日、「風車の大型化とコスト低減により、洋上風力の発電能力は今後20年で15倍となり1兆ドルビジネスになる」と指摘。「近年中に、採算面で天然ガス火力を上回り、太陽光や陸上風力と同程度になる」との見通しを示した。

メーカー各社も開発にしのぎを削っており、ゼネラル・エレクトリック(GE)は11月、オランダ・ロッテルダム港において直径220m・出力12MWという世界最大出力の巨大風車を稼働した。GEは今後、同風車をアメリカ、ヨーロッパで展開。それぞれ1200MW、3600MWの大規模洋上ウィンドファームを構築する。

洋上風力開発はアジアでも進んでおり、台湾は11月、台湾西海岸の沖合に大型風車22基の設置を完了した。出力は合計128MW。これをモデルに数を増やし、今後は数百基レベルの洋上ウィンドファームを建設していく計画だ。

写真提供:GE


取材・文/廣町公則

RE JOURNAL vol.2(2019-20年冬号)より転載

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