政策・制度

新法施行を産業創出の契機となるか? 期待が高まる「洋上風力」

これからの風力発電は “洋上”が主役になる。洋上新法誕生を機に、再エネファンドからも熱い注目を集める洋上風力発電。いま、風力業界は何を見据え、どこに向かおうとしているのか。日本風力発電協会代表理事、加藤仁氏に聞いた。

新法の施行により
洋上風力発電に追い風

洋上新法(再エネ海域利用法)が4月1日に施行され、洋上風力発電に対する機運がこれまでになく高まっています。洋上新法により、一般海域を占用するための統一的ルールが築かれることとなり、洋上風力発電の事業性を長期にわたって見通すことも可能になりました。日本風力発電協会(JWPA)としても、国により洋上風力発電を後押しする姿勢が示されたものと評価しています。

これからのエネルギーのあり方を考えたとき、日本にとって洋上風力発電の促進は不可欠です。原子力発電所の再稼働が思うように進まず、これ以上は化石燃料の輸入にも頼れないとなれば、再生可能エネルギーを増やしていくしかありません。そして、この先、ユーティリティサイズの発電所をつくっていける場所は洋上にしかないのです。

洋上ならではコスト構造
幅広い産業創出効果

洋上風力発電は、産業振興にも大きな意義があります。例えば、着床式洋上風力発電所の建設においては、基礎やケーブル、建設費など、風車そのものではないところに全体の3分の2程度のコストがかかっています。総額で3000億円だとしたら、風車自体は1000億円程度で、あとの2000億円は海の中で使われるという計算です。

着床式洋上風力発電所で使われるモノパイルタイプの基礎の場合、1本800tから1000tになります。これを年に200本納入するとしたら、それだけで20万tに達します。そこには鉄鋼業や造船業、建設業など、様々な産業が関わってきます。仮に当面、風車そのものは輸入するとしても、国内産業を十分に盛り上げていくことができるのです。

また、風車自体には約2万点もの機械部品が使われていますから、将来的には幅広い部品メーカーの躍進を期待することもできます。

 

PROFILE

一般社団法人 日本風力発電協会 代表理事

加藤 仁氏


撮影・取材・文/廣町公則

RE JOURNAL vol.1(2019年春号)より転載

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