事例紹介

ソニーが「自己託送制度」を利用! 離れた場所の再エネ電力を自社消費に!

グローバル展開するソニーだが、電力消費量の多くを占めるのは、半導体製造などの国内事業。RE100実現のポイントは、国内の再エネ調達をどう実現させていくかだ。日本初、メガワット級太陽光発電設備を活用した「自己託送」に注目が集まる。

環境負荷ゼロに向けて
再エネ導入を加速

ソニーは、2040年までに自社の事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーにすることを掲げ、2018年9月にRE100に加盟した。同社はこれまでも、環境計画「Road to Zero」を策定し、2050年までに事業活動および製品のライフサイクル全体を通して環境負荷ゼロを目指す取り組みを進めてきた。RE100への加盟を機に、再エネの導入をいっそう加速していく考えだ。

では、どうやって再エネを増やしていくのか。ソニーでは、主に以下4つの取り組みを推進するとしている。

●既に事業所の電力を100%再エネ化した欧州に加え、北米や中国での再エネ導入を拡大
●タイや日本などの製造事業所での太陽光パネルの設置を推進
●複数の半導体の製造事業所を有しソニーグループで最も電力消費が多い日本において、「自己託送制度」を活用した事業拠点間での電力融通の仕組みを構築。
●経済的かつ安定的に充分な量の再エネが供給されるよう、RE100加盟の他企業とともに再エネ市場や政府への働きかけを強化

電力会社の送配電網を使い
離れた自社施設間で電力融通

ソニーの取り組みのなかでも特に注目されるのが、「自己託送制度」の活用。同社事業所に設置された太陽光などの再エネ自家発電設備により作られた電力を、電力会社が保有する送配電網を介して、自社内の他の事業所へ供給する仕組みだ。これにより、離れた自社施設の間で再エネ電力を融通することが可能になる。発電地と需要地が遠く離れていても、自ら作った再エネ電力を最大限に有効活用することができるのだ。

具体的には、ソニー・ミュージックソリューションの製品倉庫であるJARED大井川センター(静岡県焼津市)の建屋屋上に約1.7MWの太陽光発電設備を設置し、発生した電力のうち、大井川センターでの消費量を上回る余剰電力を、中部電力の送配電網を使って、製造工場である静岡プロダクションセンター(静岡県榛原郡吉田町)へ供給(自己託送)。JARED大井川センターで発電したすべての電力を、余すところなく自社で消費することになる。

電力会社の送配電網を使い
離れた自社施設間で電力融通


出典:ソニー

自己託送のポイントは、小売電気事業者を介さないところにある。一般に、電力会社の送配電網を使う場合は、電力需給バランスの厳密な調整(同時同量)が求められ、インバランス(計画値と実際値の差)がある場合には追加費用も発生してしまう。そのため通常は、受給調整のプロである小売電気事業者が入ることになるわけだが、自己託送の場合は自らその責を負う。

従来、太陽光で発電した電力を自己託送する場合、発電量の予測等が困難なため、蓄電池を設置して変動分を補うなどの対策をとることが必要だった。一方、ソニーは、高精度の発電量予測や需要予測の技術を活用した新システムを構築し、発電・託送・需要量の同時同量を目指す。ここで用いられる予測技術は、東京電力グループにより培われてきたものであり、ソニーは同グループとの提携により、新システムの構築・運用を可能にした。

RE100への加盟に際し、同社代表執行役社長兼CEOの吉田憲一郎氏は述べている。

「RE100への加盟により、当社のみならず産業界全体において再生可能エネルギーの活用が進むことの一助になれば幸いです」。


取材・文/廣町公則

RE JOURNAL vol.2(2019-20年冬号)より転載

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