事例紹介

【積水ハウスの再エネ調達手法】顧客の卒FIT電力を買い取り、自社事業用電力として活用

2017年10月、日本企業2番目、建築業界では初めてRE100に加盟した積水ハウス。同社の再エネ調達手法は、太陽光付きの家を手掛けてきた住宅メーカーならではのものだ。鍵を握るのは、卒FIT電力の買い取りサービス。常務執行役員(環境推進担当)の石田建一氏に、その背景と狙いを聞いた。

脱炭素経営をいち早く掲げ
ゼロエネルギー住宅を提供

積水ハウスにとって、RE100への参加は、当然の流れでした。私たちは、まだ「脱炭素」という言葉も広まっていなかった2008年に、住まいからのCO2排出ゼロを目指す「2050年ビジョン」を策定し、いち早く脱炭素経営に舵を切りました。そして、2009年には環境配慮型住宅「グリーンファースト」を発売。2013年にはゼロエネルギー住宅「グリーンファーストゼロ」の販売を開始しました。RE100という国際的イニシアチブが動き出す前から、脱炭素を掲げ、CO2を出さない快適な暮らしを提案し続けてきたのです。

住まいは、50年、100年の耐久性をもった息の長い商品です。私たちには、お客様をサポートしていく責任があります。当社自体が、少なくとも100年以上、事業を継続していかなければなりません。このためには社会に必要とされる企業でなければならず、その意味でも、RE100は不可欠な要件となっているのです。

手掛けた太陽光700MW
20%でRE100が可能に

積水ハウスの新築戸数におけるZEH(Net Zero Energy House)実績は85%(2019年4月〜7月)で日本一、累積棟数は4万7575棟(2013年〜2019年7月)で世界一を誇ります。業界に先駆け、低炭素と快適な生活を両立する住まいの提供を行ってきた結果、これまでに700MWを超える太陽光発電設備を設置するに至りました。

RE100実現に向けては、こうした当社オーナー様の太陽光を活用させていただく計画です。オーナー様の屋根等にある700MW超の太陽光発電設備からは、合計で年間約700GWhの電力が生まれます。一方で、当社が事業用に使う年間電力消費量は約120GWhです。つまり、設置容量の20%弱を調達するだけで、RE100達成は可能なのです。

具体的には、FIT期間が満了(卒FIT)したオーナー様の余剰電力を、弊社で買い取らせていただきます。2019年11月、いよいよ卒FITを迎えるオーナー様が出てきたのを受け、「積水ハウスオーナーでんき」として買い取りサービスをスタートさせました。

FIT期間を終えると、それまでの条件・単価では売電できなくなってしまうため、多くのオーナー様が不安を抱えていました。「積水ハウスオーナーでんき」は、そもそもオーナー様の不安を解消するために開始したサービスです。買取単価は、1kWhあたり11円という高値を保証し、それまでの電力会社から切り替えるメリットを創出しました。当社としては、集めた電力を自社の展示場や事務所を中心に使用し、RE100の達成にも貢献できる仕組みにしています。電力事業で利益を得る考えではないため、蓄電池の購入や小売電力とのセットといった前提条件を付けずに、オーナー様にこの買取価格をご提案できているのです。

積水ハウスのRE100 独自のスキーム

出典:積水ハウス株式会社

国際的な企業評価アップ
ESG投資銘柄に選出

RE100を含む脱炭素への取り組みは、積水ハウスの企業価値向上に結び付いています。2019年9月には、ESG投資の代表的な株式指標の一つ「DJSI World」の構成銘柄に4年連続で選出されました。また、国際的な環境非営利団体CDPから、「Aリスト」に選定され、気候変動に対する活動において世界的に優秀な企業という評価を受けています。

私たちは今後も、事業を通じて、環境問題をはじめとした社会問題解決への取り組みを推進し、ESG経営のリーディングカンパニーを目指してまいります。

PROFILE

積水ハウス株式会社

常務執行役員 環境推進担当
石田建一氏


取材・文/廣町公則

RE JOURNAL vol.2(2019-20年冬号)より転載

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