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再エネ普及を支える金融の在り方とは? ESG投資の盛り上がりは続くのか

再生可能エネルギーへの投資において、日本が置かれた状況はどうなっているのか。ESG投資の本質とは何か。国連環境計画・金融イニシアティブ特別顧問で、グリーンファイナンス推進機構の代表理事でもある末吉竹二郎氏に話を聞いた。

政府がリスクを負えば
民間は投資しやすくなる

私が代表理事を務めるグリーンファイナンス推進機構は設立6年目ですが、所管する環境省が決めた政策意図が2つありました。1つは、ファンドとして再生可能エネルギーを日本国内で増やすための資金不足を解消すること。もう1つは、地域活性化につながるような事業を補助することです。

このファンドは歴史的に見て、税金を使った民間支援の面で新しい役割を担っています。それは税金でエクイティ(資本金)に直接投資するという点です。一般には税金は安全性重視の資金援助をするのが普通ですが、私は「税金こそ最もリスクの高いところに投入すべきだ」と考えていました。本当に政策を動かしたいなら、公的部門がハイリスクをとることで、民間企業が動きやすくなるからです。

これまで総額170億円ほどコミットしましたが、まだ初期段階ということもあって不良案件は顕在化していません。新しいものを作るわけですから、リスクは当然あります。

ただ、一般的な民間プロジェクトより信頼性で劣るとしても、地域のためになるならお金を投資したいという気持ちでやっています。公的資金を投入する当機構の審査をパスするような事業なら、他の投資家もより安心感を得られ、民間からお金が出やすくなります。投入される税金は再エネ普及、地域活性化のためのシードマネーなのです。

ESGで20年後れの日本
本質を考えない国民性が弱点

ESG投資の本質は、例えば1000円が1100円になる投資において、100円の利益のために環境破壊などがあればそこに価値がない。そんな投資をやめて、お金以外に重要な「E(環境)」「S(社会)」「G(ガバナンス)」という要素も加味し、投資の可否を判断しようというものです。

そもそもESG投資の始まりは、私が関わっている国連環境計画・金融イニシアティブが議論し始めた2000年代の初めに遡ります。昨今、にわかに日本でもESG投資だといわれていますが、歴史的には日本は世界に大きく後れているのです。

 

PROFILE

一般社団法人グリーンファイナンス推進機構代表理事

末吉 竹二郎氏


国際金融アナリスト。1945年、鹿児島県生まれ。67年東京大学経済学部卒業後、三菱銀行入行。98年日興アセットマネジメント副社長、03年国連環境計画・金融イニシアティブ特別顧問。13年グリーンファイナンス推進機構代表理事に就任。


取材・文/大根田康介

RE JOURNAL vol.1(2019年春号)より転載

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