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市場整備が進むPVセカンダリー、収益性向上のために必要なこととは?

太陽光のビジネスチャンスは、新規案件だけではない。FITの権利とセットになった中古太陽光発電所の売買にも大きな関心が寄せられている。中古取引きに役立つ評価ガイドも誕生し、セカンダリーマーケットの市場整備も進んでいる。発電事業の収益性が改めて問われている。

太陽光セカンダリーが活況
FIT価格下落が呼び水に

太陽光発電の導入拡大に伴い、中古太陽光発電所の売買も活発化してきている。太陽光発電のセカンダリーマーケットが急拡大しつつあるのだ。

矢野経済研究所が昨年発表したレポートによると、セカンダリー市場の規模は2016年度が200MWだったのに対し、2020年度には800MW(当該年度に取引される稼働済み太陽光発電所の発電出力ベース)にまで拡大するという。

取引の対象となっている中古案件は、具体的には2012年のFIT制度誕生後にできた10kW以上の太陽光発電設備だ。つまり、まだFIT期間が十分に残っている、全量売電対象の事業用太陽光発電所ということになる。発電所そのものと、FITの権利がセットになって取引されるところがポイントだ。

FIT買取価格は年々下落しているので、新規に太陽光発電所を建設するよりも、セカンダリー物件を購入した方が高収益を期待できる場合もある。過去に設定された高いFIT価格で、今後も売電することができるからだ。

今年度の事業用太陽光のFIT買取価格は1kWhあたり14円だが、2012年度に認定を受けたセカンダリー物件なら同40円という高額。その差は、残存買取期間を考慮しても十分に魅力的だ。

太陽光発電事業の評価ガイド
中古取引の客観指標に

セカンダリー物件の取引においては、その物件の現況をしっかりと見極めなければならない。発電設備としての性能が衰えていないか、近隣住民との間にトラブルを抱えていないかなど、押さえるべきポイントは多岐にわたる。

実際、同時期に作った太陽光発電所であっても、太陽光パネルの設置状況やメンテナンス次第で、発電能力は大きく違ってしまう。しかし、これまではそれを評価する客観的な指標がなく、提示された取引価格が適正なものなのかを判断することも難しかった。

こうした状況を変えるものとして、いま多方面から期待されているのが、「太陽光発電事業の評価ガイド」だ。昨年、太陽光発電協会が事務局となり、太陽光に携わる学識者と様々な業界の企業・団体が連携して策定した。事業継続に対するリスクを評価するものとして、権原・法令手続、土木・構造設備、発電設備など、太陽光発電事業全体に及ぶ162項目が盛り込まれている。

<太陽光発電所売買時の評価>

出典:太陽光発電事業の評価ガイド

経済産業省も「評価ガイドが発電所の事業性を評価する際の客観指標となることで、発電所売買の透明性が向上し、セカンダリー市場の活性化(再投資の促進)につながる。適正な発電事業のセカンダリー取引が活性化することで、買取期間終了まで継続する太陽光発電事業の長期安定稼働を実現する」として、評価ガイドの積極的活用を推奨する。

セカンダリー物件が蘇る
リパワリングで収益改善

セカンダリーマーケットのキーワードの1つに「リパワリング」がある。経年劣化によって落ちてしまった発電能力を回復させ、収益改善を図ろうとするものだ。

ここで注目されるのが、次世代パワーエレクトロニクスとも称される、モジュールレベルの最適化技術。太陽光パネルやパワーコンディショナを更新することなく、発電効率を高めることができる後付け製品も普及し始めている。

売り手としても、買い手としても、セカンダリー物件の価値を高める手法として検討しておきたいものだ。


取材・文/廣町公則

RE JOURNAL vol.1(2019年春号)より転載

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