東急100年目の挑戦! 鉄道事業の電力もRE100へ
2020/09/11
首都圏の交通網を支え、住宅開発も手掛ける東急は、100年の歴史の中で新たな挑戦をしている。それが、RE100による低炭素・循環型社会の実現だ。具体的にどんな目標を立てたのか、その詳細に迫る。
低炭素・循環型社会の実現
CO2排出量ゼロの目標
2019年10月に東急電鉄の会社分割により新体制となった東急グループが、RE100に加盟したと発表した。
同グループは、オフィス開発などの不動産事業を手掛ける東急が親会社となり、連結子会社には分割された東急電鉄(東急田園都市線など)の他、東急百貨店、東急ホテルズなどがある。
鉄道事業を含む企業グループがRE100に加盟するのは、これが全国初の事例だという。
東急は、2018年度からの中期3ヶ年経営計画において、企業継続に必要な「サステナブル重要テーマ」(安全・安心、まちづくり、生活環境品質、ひとづくり、低炭素・循環型社会、企業統治・コンプライアンスの6つ)を設定。そのうち、低炭素・循環型社会の実現に向け、省エネルギーと再生可能エネルギーの最適利用に取り組んでいる。その一環がRE100だ。
長期目標として2050年までに事業で使用する電力を再生エネルギー100%で調達するようにする。また、電力使用によるCO2排出量を2030年までに30%削減し、2050年までにゼロにする。
今回の対象は 、自家発電した電力(Scope1)と他者から供給された電力(Scope2)が対象。原材料の調達から輸送などを含む排出量(Scope3)は含まない。また基準年は、鉄道事業(東急線)が2010年、不動産事業その他が15年で設定している。
東急元住吉駅のホーム屋根部分とコンコースの上部には、140kW分の太陽光パネルが設置されており、2018年度は同駅の電力使用量の約10%を賄った。 ©東急電鉄
東北電力と協力して
安定的な再エネ調達
「当社はこれまで環境に対する具体策が不足していた」と、同社社長室サステナビリティ推進グループの金澤克美課長は話す。
とはいえ、地域との調和を目指した環境づくりは早くから取り組んでいた。例えば、商業施設、オフィスなどの複合施設「二子玉川ライズ」(東京)では、1980年代初頭から開発を進め、2015年にオープン。ここが、生物多様性の保全や回復に資する取り組みを定量的に評価する「JHEP認証制度」で最高評価のAAAを取得した。
そうした中、定量的かつ骨太な環境目標を定めて、より低炭素・循環型社会の実現を具体化するため、いくつかの社内協議を経て、RE100が最も明解かつ手の届く目標だったため挑戦に至った。
同社の再エネ電力については、外部から調達している。その事例として、2019年3月に誕生した、日本初の再エネ100%電車が走る「東急世田谷線」がある。
ここでは、東北電力の水力発電、地熱発電による電気を、東急グループのエネルギー供給会社である東急パワーサプライが取り次ぐというスキームを構築した。これにより、一般家庭が年間に排出するCO2の362世帯分相当をゼロにできる。
このような方法をとる理由は、鉄道という事業の特徴にある。例えば、自社開発の太陽光発電で電車の電気をすべて賄おうとすると、夜に電気がなくなるため、太陽が沈むと電車が走らないといった不測の事態が想定される。その点、水力や地熱なら、夜も発電できる。技術的にも電力の安定性を担保できるという訳だ。
また、鉄道は朝のラッシュ時などに、電力を使用するピークが一気に大きくなる。設備をそれに合わせて作るとなると、莫大な費用が掛かってしまうのだ。
今後は「エネルギーマネジメントが課題」(金澤氏)だという。蓄電池の活用なども含めて、消費の大きい鉄道事業の電力を、いかに再エネ100%でコントロールできるか。蓄電池の活用なども含めて、目標達成に邁進する。
世田谷線における
再エネ100%電力サービスの提供体制
東北電力グループは、発電所数で国内最多の水力発電と、出力ベースで国内トップの地熱発電により、鉄道運行を可能とする再エネ電気を安定的に供給。それらの電源を取次する東京パワーサプライの「再エネ電気サービス」を採用することで、再エネ100%での運行を実現した。
PROFILE
東急株式会社
社長室 サステナビリティ推進グループ企画担当 課長
金澤克美氏
取材・文/大根田康介
RE JOURNAL vol.2(2019-20年冬号)より転載