投資戦略

再エネは一過性のブームではない? 安田陽氏が語る「課題と本質」

再エネは、外部コストが少なく便益が大きいからこそ、世界中の投資家や政策決定者に選択されている。「送電線の空き容量」に鋭く迫ったことで知られる京都大学大学院特任教授・安田陽氏の言葉には、再エネ投資を考えるうえでの重要なヒントが満ちている。

再エネが世界各国で
推進される理由

 

再エネ推進を読み解くキーワードは「便益」と「外部コスト」です。これらはあまり浸透していませんが、この2つのキーワードを抜きに再エネは語れません。

「便益」とは特定の企業や個人の利益(私的便益)ではなく、地域住民や国民、地球市民全員が享受できる社会的便益を指します。日本ではよく「メリット」や「恩恵」とも言い換えられますが、抽象的でふんわりしたものではなく、貨幣価値など定量的に算出されるものです。

また「外部コスト」は、一見安く見えても市場価値に反映されない隠れたコスト(例えば環境汚染など)のことで、これらを透明性高く計量することが重要です。

再エネは、外部コストが少なく便益が大きいからこそ、世界中の投資家や政策決定者から合理的選択によって選ばれ、推進されています。いずれにせよ、一過性のブームや観念的運動ではなく、数値やエビデンスによって合意形成や政策決定がなされている、というのが世界の動向です。

日本の再エネ課題の本質は?

日本の再エネ課題は数値やエビデンスによって合意形成や政策決定がなされていない点にあります。

残念ながら、日本はまだ十分成熟していないと指摘せざるを得ない言説や状況も少なくないです。例えば再エネ推進や石炭へのダイベストメント(投資引き揚げ)を一過性の観念的ブームだと過小評価するような論調も見られます。メディアも含め国全体で、数値やエビデンスによって意思決定されない風潮にあることが日本の直面する大きな課題なのです。

送電線の「空き容量問題」

日本では、大量の再エネ電気を現在の送電インフラに流すことは技術的に困難であるかのように思われていますが、これも数値やエビデンスに基づいておらず、世界各国で積み上がっている知見や経験が十分に活かされていません。

より重要なのは、技術的課題ではなく、制度設計の問題なのです。定格容量に基づく静的な推計ではなく、実潮流に基づくリアルタイムに近いモニタリングとインテリジェントなコントロールを想定した制度設計に変更すれば、現在のインフラ設備や技術でも十分、再エネの大量導入は可能です。

単純に一言でいうと、「古い考え方や古いルールのままだと、新しいテクノロジーを受け入れることはできない」ということに尽きます。

出力抑制の正しいあり方は?

よく「再エネはお天気まかせで制御できない」と揶揄されることもありますが、実は技術的には再エネもある程度、調整可能です。

出力抑制は、再エネが最も簡単にできる制御のうちの一つ(下方予備力)で、電力系統の信頼度維持に貢献します。問題は、このような電力系統に貢献する予備力(調整力)を提供する際には電力量(kWh) を犠牲にするので、発電電力量による収益が減ってしまうことです(実はこれは火力発電所でも同じことがいえます)。

理想は、このような予備力がきちんと市場で価値付けされて、市場行動に基いて再エネ発電所が自主的に出力抑制(下方予備力を提供)するようになることです。デンマークや米国の一部の州では既にそのような市場行動が見られています。日本でも、公平で透明性の高い市場設計の議論を進めなければなりません。

なお、マクロ的な国際比較を行うと、再エネの大量導入が進む欧州諸国では変動性再エネ(風力+太陽光)の出力抑制率(変動性再エネの発電電力量に対する逸失電力量)は3~5%程度です。九州エリアの出力抑制率は2.98%(2018年度第4四半期)でしたので、それほど大騒ぎするレベルではありません。もちろん、ミクロ的に見れば抑制率を低減させる方策はさまざま残されており、今後、抑制率があまり上昇しないよう、さらなる議論が必要です。

これからの再エネ投資に必要なこと

多様性のあるポートフォリオを組んで、イノベーションとリスクマネジメントにきちんと投資をすること。さらに外部コストをできるだけ低くする。そして透明性の高い経営を行うプレーヤーが評価される市場環境を整備するのが大切です。

PROFILE

京都大学大学院 経済学研究科
再生可能エネルギー経済学講座特任教授

安田 陽氏

1994年、横浜国立大学大学院博士課程修了。博士(工学)。関西大学システム理工学部准教授を経て、2016年9月より現職。現在の専門分野は風力発電の耐雷設計および系統連系問題、電力情報統計分析、電力市場設計の経済政策。


Text: Kiminori Hiromachi

RE JOURNAL vol.1(2019年春号)より転載

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