政策・制度

日本の再エネ、伸びしろは風力にあり? 環境整備による飛躍的成長が期待される

風力発電事業を取り巻く環境が大きく変わっている。太陽光発電の適地が減っていくなかで、風力発電は法整備も進み、より一層注目が集まっているのだ。

世界全体の風力発電は6億KW
日本も導入に本腰!

日本で再生可能エネルギーといえば太陽光発電だが、世界では風力発電の方が主流だ。世界全体の累積導入量は、2018年末時点で、太陽光発電が約5億1000万kWだったのに対し、風力発電は約6億kWに達している(出所:自然エネルギー白書)。

日本では、2012年にFIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)がスタートして以来、太陽光発電が急速に伸び、2018年末までに国内の累積設備容量は約4800万kWに至った。この量は世界的にみても大きく、中国・米国に次いで第3位に位置している。一方で、風力発電の累積導入量は約370万kWに留まっている(出所:資源エネルギー庁公表データ)。

しかし、日本に風力発電が適していないわけではない。環境省の試算では、国内太陽光のポテンシャル(導入可能量)が3億6000万kWであるのに対し、国内風力のポテンシャルは18億kW(陸上風力3億kW・洋上風力15億kW)もある。

政府は昨年、「第5次エネルギー基本計画」において、2030年に向けた基本方針として「再生可能エネルギーの主力電源化」を明確に打ち出した。再生可能エネルギーの中でも、風力発電については、「大規模に開発できれば発電コストが火力並みであることから、経済性も確保できる可能性のあるエネルギー源である」として、特に力を入れていく姿勢を示している。

日本の再エネの伸びしろが風力発電にあることは、国も意識するところなのだ。導入促進に向けては、環境アセスメントの迅速化や、電気事業法上の安全規制の合理化等を進めることも謳っている。

「再エネ海域利用法」施行
洋上風力を主力電源の柱に

こうした国の方針を具体化する法律の1つが、4月1日に施行された。風力発電の中でも、とくに洋上風力発電の促進を目的とした「再エネ海域利用法(海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律)」だ。

洋上風力発電は、日本では未だ商用化されていないが、欧州を中心に既に海外では普及している。コスト低下も急激に進んでおり、大規模な開発も可能であることから、国土が狭く海に囲まれた日本には最適な電源とも目されている。

洋上風力発電が日本で普及しなかった理由として、一般海域を風力発電設備で長期占用するための統一的ルールや、海運や漁業など先行利用者との調整の枠組みが存在しなかったことが挙げられる。再エネ海域利用法は、こうした課題に対応し、その解決を図るためにある。


出典:経済産業省資源エネルギー庁「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会 洋上風力促進ワーキンググループ」

具体的には、まず国が、洋上風力発電の導入を促進すべきエリア「促進区域」を国内に複数箇所指定する。次に、そのエリアで洋上風力発電を行う事業者を公募(入札)によって選定する。そして選ばれた事業者には、その海域を最大30年間にわたって占用することが認めれる。先行利用者との利害調整の場として、関係者間で必要な協議を行うための協議会についても定めている。

これまでの占用許可期間は都道府県によってまちまちで、5年程度と短いものが大半だった。再エネ投資の観点からは、これが30年となったことに大きな意味がある。少なくともFIT期間中(20年間)に再許可の必要がないので、事業継続のリスクは減り、事業者の予見可能性は向上する。金融機関としても、融資がしやすくなるというわけだ。

一方で、洋上風力発電設備を設置できる場所は実質的に「促進区域」に限定され、事業を行えるのは入札によって選ばれた事業者だけということになる。現時点では、促進区域が全国に何ヵ所指定されるのかも明確には定まっていないが、同法によって発電事業のあり方が根本的に変わっていくことは間違いない。日本の風力発電事業は、生き残りと飛躍的成長をかけた新たなステージに突入するのだ。


取材・文/廣町公則

RE JOURNAL vol.1(2019年春号)より転載

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