事例紹介

早くも再エネ100%達成! 日本の金融機関で唯一RE100参加の”城南信用金庫”

日本有数の信用金庫(預金量・貸出金量全国2位)である城南信用金庫は、国内金融機関では唯一のRE100参加企業であり、日本で初めてRE100目標を達成した組織でもある。城南信金は、なぜRE100に加盟したのか、どのように再エネ100%を実現したのか。吉原毅顧問(元理事長)に聞いた。

RE100は
脱原発のために


脱原発に向けて多様な取り組みを推進。

城南信用金庫は、かねてより脱原発を訴え、行動してきました。RE100に加盟したのも、とにかく原発を止めたいがためです。RE100を語るとき、いまはCO2が大きな問題としてクローズアップされますが、いちばん重要なのは脱原発を実現することなのです。

近年、SDGs(2015年国連サミットで採択された国際社会が目指すべき「持続可能な開発目標」)への関心も高まっていますが、SDGsには脱原発への言及がありません。国連には、原発に反対できないという限界があるのでしょう。我々は、SDGsを超えてRE100というものを考えています。ひたすら原発反対に徹する。この一念で、あらゆることに取り組み続けています。

なぜかといえば、我々は公益事業の金融機関だからです。国にとっても、世界にとっても、現在いちばん問題なのは、原発がいまだに稼働しているということに他なりません。それは、人類に危機をもたらし続けています。公益事業の一翼を担う金融機関として、これに真正面から取り組むことが大事だと考え、我々はRE100を推進しており、その他にも、ファイナンスを通じた発電事業者への支援再エネ普及のための講演活動などに取り組んでいます。

バイオマス発電98%
J-クレジット2%

当金庫は、2018年5月にRE100に加盟しました。そして、2019年7月に、国内企業では初めてRE100目標を達成しました。具体的には、購入電力の約98%を占める本支店等の所有物件の電力をすべて再生可能エネルギーに切り替え、残り約2%の賃貸物件等の電力についてはJ-クレジットを取得し、実質100%再生可能エネルギーを実現しています。

原発に頼らない安心できる社会の実現に向けて、当金庫では、2012年1月に東京電力との契約を解除し、再エネや民間の余剰電力を調達し販売しているエネットさんとの契約に切り替えました。RE100に関しても、エネットさんと新たに、当金庫の全消費電力をCO2フリーとする契約を結びました。現在、供給される再生可能エネルギーは、すべて非FITのバイオマス発電によるものとなっています。

残り約2%の賃貸物件というのは、駅中に入っているような店舗です。こうした物件の場合、所有者それぞのお考えもあり、容易に切り替えることはできません。これをどうするかが課題だったのですが、エネットさんが保有しているJ-クレジットを購入し、CO2をオフセットすることで、RE100達成に至りました。

電力消費量を超えた
金融機関としての影響力

振り返れば、我々がRE100に加盟のための相談をしたとき、初めは当金庫の電力消費量が少なすぎて、RE100の対象企業にはならないと判断されてしまったのです。いまでこそ日本企業に対する基準は緩和され、年間電力消費量10GWh以上が目安とされていますが、当時は100GWh以上であることが基準の1つとして求められていたのです。当金庫は、これには足りませんでした。

しかし、こまでの取り組みを説明し、ご理解いただくことで、認定要件の1つである「RE100の目的に寄与する何らかの特長と影響力を有する企業」と認められ、加盟することとなりました。

海外では、多くの金融機関がRE100に加盟しており、金融機関の主導によって企業の再エネ導入が進んでいるケースも少なくありません。日本では、まだRE100に加盟する金融機関は当金庫だけですが、金融機関の果たすべき役割はますます大きくなっていると感じます。我々は今後とも、自ら率先して行動し、各方面に訴え、賛同者を広げることにより、原発に頼らない安心できる社会の実現に向けて全力で取り組んでまいります。

PROFILE

城南信用金庫
顧問

吉原 毅氏


取材・文/廣町公則

RE JOURNAL vol.2(2019-20年冬号)より転載

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