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太陽光発電所の“最善運用”とは? コスト・品質・効用の最適化がカギ

日本のO&Mマーケットは、アセットマネジメントの視点が欠けている。多くの発電所の評価・診断を手掛けてきたCO2Oは、新たなガイドラインの策定などを通じ、発電所の最善運用(ベストプラクティス)の刷新を試みている。

顕在化し始めた運用リスク

日本の太陽光発電事業は今、FITに依拠した短期的な視点から、20年以上発電を持続させる長期的視点への転換が求められている。その背景には、太陽光発電を長期に安定した主力電源として位置付けたいという国の思惑がある。

これを阻害する要因のひとつとして設計や施工の不備に起因する事業リスクが指摘されている。

全量買取制度により急速に太陽光発電所が増えた一方で、不具合のある発電所が各地に生まれてしまった。これに対し、具体的な対策をとれるプレイヤーが不足している。単なる点検だけでは制御できないため、調査・診断によってリスクの本質を見極めたうえで経営の課題として運用していくことが重要なのだ。

2.1GW超の発電所を診断し、補修も手掛けてきた実績があるCO2Oの酒井正行社長は、「アセットマネジメント(資産管理・運用)の手法を包含したO&Mが必須だ」と訴える。

これまで太陽光発電事業に関わるガイドライン等についてはいくつかあった。実は、2018年6月にJPEAから公表された「太陽光発電事業の評価ガイド」の策定の中心メンバーは同社だった。しかしながら、既存ガイドライン等においてはいずれも経営の観点=アセットマネジメントの視点が不足している。

新たな経営ガイドラインを
2019年度内に作成か

同社の「太陽光発電を主力電源化するためにはアセットマネジメントガイドライン※1の策定が必須である」との呼びかけに応え、国内大手金融機関、投資家、国内総ての上場インフラファンド、監査法人等が連携。複数のガイドラインを横断的に取り入れた新しい経営ガイドラインを2019年度内に作成する動きがある。

太陽光発電事業の望ましい事業運用のあり方について最適かつ最短で事業化するためのベストプラクティス構築については企業文化、組織などが企業ごとに全く違うために企業ごとに構築することは膨大な時間がかかり非現実的だ。そこで、国際標準ISO55001※2(JIS Q 55001)を規範としてベストプラクティス構築をしていくのだ。

下水道分野では、すでにISO55001を適用したユーザーズガイドが作成されている。これを作ったメンバーと連携し、経済産業省も巻き込んで、太陽光発電所にあったアセットマネジメントシステムを作っていく。

※1 アセットマネジメントの国際規格であるISO55000シリーズを基にした、太陽光発電事業のためのガイドライン。既存の設計ガイドライン、保守点検ガイドライン、評価ガイドラインなどを横断的に包括し、新たに策定される見込み。
※2 組織の資産をライフサイクルを通じ、コスト、リスク、パフォーマンスのバランスを保ちながら、最大の可用性と収益性を確保するための国際基準。これを規範に各社ごとに具体化、自社のベストプラクティスを構築する。

 

投資家の収益を最適化する
アセットマネジメント

同社が2.1GWの発電所を評価する中で、重大リスクの要因が特に土木造成、架台構造だと掴んだ。「ここが発電所の価値を大きく毀損してしまうポイント。太陽光発電業界には土木や構造まで理解できる人が少ない」と酒井社長は話す。

そこで同社はソフト(O&Mの品質)、ハード(発電所の品質)の両面で総合的に発電所を評価していく。メンテナンスに偏らず、オペレーション(運用)も含めたアセットマネジメントの視点を加え、法的要求事項や地域住民との共生なども含ませた。

また、20年以上の運用を視野に入れたオペレーションまで検討し、投資家の収益を最適化、最大化するところまで立案する。資産運用で先行する不動産業界と、太陽光発電業界との決定的な違いは、所有する個別の収益不動産の資産価値を最大限にする専門のプロパティマネージャー(PM)の有無だ。太陽光発電業界には専門のPM業者がいないため、「当社がその役割を担いたい」と同社事業本部長の森本晃弘氏はいう。

投資家の収益を最適化するためには、リスクについての視点が不可欠だ。コスト抑制だけでは品質向上や長期安定運用は実現できない。ただ、品質に偏りすぎると収支を圧迫してしまう。

リスクに応じたマネジメントこそが望まれており、コストと品質の最適化には技術的な知見ばかりでなく法務や会計といった経営的な知識が必須だ。双方が伴わなければ的確な経営判断を下せない。現状はメンテナンス会社に運用のほとんどを任せてしまうケースが多く、実際の収支予測とのギャップが生まれる。マネジメントの本質を理解したO&M業者が少ないのが実態だ。


投資可能な費用、オペレーションや資本的支出に及ぼす影響を精査し、OPEX(運用コスト)、CAPEX(設備投資)から実効性や品質の最適な方法を決定しなければ、投資家の利益は最大化できない。そのためにはアセットマネージャーによる具体的な対策の決定が不可欠だ。

 

 

長期安定運用のために
必要な第三者評価

発電所の適合性評価には、3つのパターンがある。まず「第一者評価」は、あくまで自己宣言で客観性に欠ける。「第二者評価」は取引先の力量を自ら直接に評価を行う。評価する者に一定の力量が伴わなければ困難だ。

「第三者評価」は、例えばISOなどでは認証機関が国際基準を基に評価を認証する。今後、同社は自らも太陽光発電所運用のサービスプロパイダーとしてISO55001認証を取得し、第三者評価に耐え得る運用によって事業の信頼性、効率性、透明性を高め適切な投融資と所有・管理の集約化(ポートフォリオ)を促進することを目指す。運用に不安を有する事業主は、同社に運用委託すれば事業の安定化を図ることが可能となる。

同様に発電所の建設段階から第三者機関に監理を委ね品質を担保する手法も動き出している。最近、同社にはEPCを監理してほしいという問い合わせが増えてきた。これは施工不備を防ぐコンストラクションマネジメントといわれ、建設業界では当然の措置。EPCを信じ切るのではなく、早期に同社のような評価のプロに検査を依頼し、実態把握することが長期安定運用に不可欠だ。

戦略的な
アセットマネジメントとは?

●最適な不具合是正の実施
対策(資本的支出)にかけるコストを算出し、最善策をとれなければ必要最低限の改修で品質を確保。O&Mのコストも算出し、運営コストの最適化、売電収益の確保、事故の予防を行い発電所価値の維持を実現する。

●発電所ごとのリスクを見極める
リスクには大きく分けて、製品・設計・建設に起因する問題(瑕疵・不具合、といった一般には制御できないリスク=受容できないリスク)とO&Mにてコントロールすべき問題として(制御可能なリスク=受容可能なリスク)がある。この2つのリスクは質が全く異なるため、見極めが重要だ。

●事業戦略の再策定・実践
案件開発から資産価値評価、転売までワンストップソリューションで対応できるのが同社の強み。EPCの設計や施工が正しいか、運用計画は資産価値の最大化ができているかなどを各段階で判断し、投資家の収益最大化、コスト最適化という要望に最大限応える。

ベストプラクティスを支える
CO2OならではのAMソリューション

●精緻なデューデリジェンス
施設売買時における発電所の調査・診断をする。発電電力シミュレーション、リスク分析、構造計算の実施などを通じて資産としてのバリューを定量化。またリスク、バリューの評価に基づき運用改善策の策定も行う。

●コストバランスにすぐれた是正措置
現場からの報告を受け、リスクの質や不具合に至る可能性の高さ、影響の度合い、対策コストを分析し、是正対策を検討。EPC責任、保険適用の判断、是正の有無による20年間のコスト(OPEX,CAPEX)などを提示する。

●事故案件の再生
事故発生時、まず現状と設計図書との比較分析をし、素因・誘因を究明。再生のための再設計としてドローンによる測量実施や土木造成、電気設備の再設計をし、工費算出、発電シミュレーションを行うだけでなく、必要となる法令調査も行うほか、再販売先の確保等の出口戦略の策定などを行う。

●コンストラクションマネジメント
施工中の不具合を防止するため、EPCを監理。中には施工ミスを認めつつも、瑕疵担保責任期間の終了を理由に責任を負おうとしない悪質なEPCもいる。既設では証拠を押さえ、新設では施工中の監理をすればリスクを減らせる。

PROFILE

株式会社CO2O
代表取締役

酒井正行氏

事業本部長

森本晃弘氏

問い合わせ

株式会社CO2O
東京都港区芝浦3丁目13番1号
矢島ビル6階
TEL:03-5439-5242
評価診断実績 累計2.1GW超


全国各地で10MW以上の特別高圧、高圧の案件を中心に2.1GW超の評価診断を下してきた、国内でも随一の実績を持つ(2019年3月時点)。その中で、特に土木造成、架台構造に重大リスクが潜むことが判明した。日本の太陽光発電所の累計導入量は50GW超。今後も診断数は増える見込みだ。


取材・文/大根田康介

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