政策・制度

【再エネ電力調達ガイド】RE100が認める再エネ電力とは?

企業は、どのように再エネ電力を増やしていけば良いのか。明確かつ現実的なプランがないとRE100には参加できない。ここでは、再エネ電力を調達するための基本パターンを紹介する。

再エネ調達3パターン

「RE100」加盟の大前提は、自ら定めた目標年(遅くても2050年)までに、自社の事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーにすることだ。単に目標として掲げれば良いというわけではない。それを実現するための戦略とロードマップを示さなければならない。また、加盟したら毎年、進捗報告を行うことも義務づけられる。

では、電力を100%再生可能エネルギーにするには、どうしたら良いのか。基本パターンは、大きく分けて次の3つだ。

①自家発電=自社の敷地内に再エネ発電設備をつくり、そこで発電した電力を使う。
②電力購入=太陽光発電や風力発電、バイオマス発電など、再エネ発電設備で発電された再エネ電力を買う。
③証書購入=環境価値が付与された証書(「グリーン電力証書」「J-クレジット(再エネ由来)」「非化石証書(再エネ指定)」のいずれか)を買って、再エネ電力を使っていると見做してもらう。

自分でつくって自分で使う

それぞれを具体的にみてみよう。まず、自ら再エネ電力を生み出し、それを事業活動に使う、自家発電・自家消費パターン。野立ての発電設備だけでなく、工場や物流倉庫の屋根に太陽光パネルを設置するケースも多い。電力消費の大きい生産ラインにあわせて設置すれば、購入電力量を大幅に削減することもできる。設置場所や電力使用状況など、条件さえ整えば理想的な再エネ調達手法といえるだろう。

これまでは敷地内で発電した電力は敷地内で使うというのが自家消費の基本だったが、後に紹介するソニー(P16参照)のように、離れた自社施設間で電力を融通する手法も出てきている。自家発電だけで、事業活動に伴う全電力を賄えるケースは少ないが、社会に再エネを増やしていくという観点からは、まっ先に考えるべき手法だろう。

電力会社から調達する

電力購入については、それが再エネ発電設備で発電された電力であり、環境価値を有するもの(再エネ電力)であることがポイントになる。環境価値とは“再エネであることの価値”と言い換えても良い。

日本では、2012年のFIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)スタート以降、太陽光を中心に再エネ発電設備が急増した。しかし、そこから供給される電力の多く(FIT制度を使って売られている電力)は、再エネ電力とは認められていない。発電事業者がFIT制度を制度を使って電力を売る場合、その電力に含まれる環境価値は、再エネ賦課金を払っている国民全体に帰属するものであり、その電力には含まれないと解釈されているからだ。そのため、電力会社のメニューにある「FIT電気」を購入しても、再エネ電力を使っていることにはならない。

つまり、再エネ発電設備で発電された電力のうち、FIT制度を使わずに取り引きされた電力(非FIT電力)だけが、RE100に活かせる再エネ電力ということになる。電力会社が自ら所有する再エネ発電設備や、電力会社が再エネ発電事業者との相対契約によって仕入れた電力などがこれにあたる。そうした電力を、電力会社(小売電気事業者)から調達するというのが、電力購入の基本パターンだ。

非FIT電力には、FIT制度による買取期間を満了した、いわゆる「卒FIT電力」も含まれる。制度ができた初めの年に認定を受けた住宅用太陽光が、2019年11月に卒FITを迎えている。その量は2023年までに165万件(670万kW)に達すると見込まれており、この電力を集めて、RE100向けに販売する電力会社も出てきている。

この他、企業が再エネ発電事業者と直接契約を結び、自ら再エネ電力を調達する手法もある。コーポレートPPA(Power Purchase Agreement)といって欧米で普及しているやり方だが、日本ではまだ制度的制約もあり広まってはいない。発電側・需要側それぞれの事情にあわせたマッチングが可能であり、今後に向けて期待が高まる。

環境価値を「証書」で買う

自家発電に限界があり、再エネ電力の調達も十分にできない場合に活きてくるのが、環境価値が付与された証書を買うという手段だ。ここでいう証書とは、再エネ電力から環境価値を切り出して、実際の電力とは別に、環境価値だけを金銭で取り引きできるようにしたもの。

RE100に認められる証書として、日本には次の3種がある。
・グリーン電力証書
・J-クレジット(再エネ由来)
・非化石証書(再エネ指定)

再エネではない電力と、上記いずれかの証書を組み合わせることで、あたかも再エネ電力を調達しているかのように見做してもらうことができる。それぞれ発行元や金額、購入方法等が異なるので、購入する電力とあわせて電力会社に相談することになる。はじめから証書をセットにして、再エネ電力として売られている場合もある。調達可能な再エネ電力の総量が不足している現状にあって、証書を購入するという手段も有効な選択肢のひとつだ。

ブロックチェーン技術を活用した電力のP2P取引など、新たな手法も生まれつつある。FIT制度も近年中に終わり、FIP制度(P42参照)に移行する予定だ。新制度の下では、また別の形での再エネ電力調達が可能になってくるだろう。再エネ電力を求めるRE100の動きが、電力取引の可能性を拡げていくことは間違いない。


取材・文/廣町公則

RE JOURNAL vol.2(2019-20年冬号)より転載

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