TBS、クリーンサタデーを推進! 再エネ放送や再エネ劇場など新機軸に。
2020/10/01
「RE100」には加盟していないものの、独自のアプローチで再生可能エネルギー導入拡大に取り組んでいる企業もある。「100%再エネラジオ放送」を行ったり、「100%再エネ劇場」を運営するTBSグループもその1つだ。同社の狙いは、どこにあるのか。メディア企業ならではのビジョンを探った。
メディア企業として
信頼を得る大前提
TBSグループは2019年10月16日、「サカス広場」「BLITZ赤坂」「TBS赤坂ACTシアター」で使う電力を100%再生可能エネルギーに切り替えた。TBS赤坂ACTシアターは、大型シアターとしては日本初の「100%再エネ劇場」となった。同社は約1年前から、100%再エネのラジオ放送「クリーンサタデー」を実施するなど、再エネ導入拡大に積極的に取り組んでいる。その理由をたずねた。
「社会課題解決と企業価値向上はもちろんですが、取材・報道活動にとどまることなく、自ら積極的に実践することが、メディア企業として信頼を得る大前提だと考えています」(TBSホールディングス社長室広報部)。
テレビやラジオを通じて再エネの普及を促すだけでなく、しっかりと自社で導入していくことが大事だというわけだ。その一環として、電力会社を切り替え、パワーシフトを推進してきた。
戸田送信所の電力を
100%再エネ化
再エネ電力での放送を実践する、TBSラジオ戸田送信所。
同社グループは、早い段階から再エネだけを使った放送を目指し、その第一弾としてTBSラジオ戸田送信所(AM波の基幹送信所/埼玉県戸田市)の100%再エネ化を検討してきた。その過程で協業を決めたのが、ブロックチェーンを使って電源由来証明を可能にした、新電力の「みんな電力」だった。
2018年12月、みんな電力から調達した電力により、戸田送信所の100%再エネ化に踏み切った。送信所を100%再エネにするのは、放送局では初めてのことだ。これを機にスタートしたのが、土曜日のラジオ放送を再エネだけで運営する「クリーンサタデー」という取り組み。「この番組は○△発電所の電力を使って放送しています」と、発電所までアピールできるのは、ブロックチェーン技術による電源由来証明があるからこそだ。
TBSは2019年9月、みんな電力に出資するとともに業務提携契約を結び、関係を強化した。このような協業や再エネの利用拡大への取り組みが、TBSグループにどのような価値をもたらすのか聞いた。
「グルーブをあげて社会課題の解決に取り組む姿勢を示すことは、対外的にブランディングやリクルーティングに大きく寄与します。また社内的にも、企業人として、個人として社会課題を考え、行動するきっかけになるものと考えています」(同広報部)。
同社グループは、長期的な視点で企業価値の向上と社員の意識改革を試みているのだという。再エネの取り組みに対する取引先企業や株主、視聴者の反応も総じて良好で「好感を持って受け止められています」と、確かな手ごたえをつかんでいる様子。
柔軟な発想で
再エネ導入拡大を推進
現時点では「RE100」への具体的な参加予定はないというが、「日本のメディア企業はまだ1社も加盟していないので、検討したいと考えている」とのこと。同社グループが、再エネ導入を強く意識していることは間違いない。
最後に、再エネ電力の供給サイドに求めることを聞いた。
「再生可能エネルギーという単語は決してわかりやすい日本語ではないため、『自然エネルギー』や『アースエネルギー』など、業界全体で平易な語句に代えていくことを検討してはいかがでしょうか? 普及を加速させるトリガーになると思います」(同広報部)。
幅広い層の視聴者をもつ、メディア企業ならではの提案だ。
写真出展:TBSホールディングス
取材・文/廣町公則、倉田楽
RE JOURNAL vol.2(2019-20年冬号)より転載